続・廃業します

(2025.03.18)

 このコラムに「廃業します」を書いて間もなく、以前に講習会を実施したことのある企業の幹部の方から、辞めるのなら最後に講習会を実施してほしいとの依頼がありました。以前の講習会の受講者が管理者になり、現在中心となる実務者に改めて講習会を受けさせたいとのことです。依頼された方は以前導入に尽力され、その後中心になり社内展開された方で、その効果に満足されている様子です。
 引き受けた講習会から1年ほど経過しますがその間ずっともやもや感が続いています。当然筆者なりに現状での最善の手法を伝えたつもりです。「変化点」の掘り下げ方、「機能」をどのように捉えるか、そこから「故障モード」をどのように導くかを実習を通じて身につけてもらおうとしたつもりです。しかし、終わった後の評価は推進者も含め芳しくなかったようです。20名余りの方々の7時間の工数を無駄にした事になり、誠に申し訳ない次第です。
 根本的な原因は受講者側は現状に満足しており、さらなる改善など必要にないと考えているのでしょう。DRBFMを実施して漠然と効果が出ていると考えている、あるいは、管理者から指示されている、実施する決まりになっているなど。確かに推進者の話では、DRBFMを実施するようになってから、不具合が減って効果を実感しているとのことです。
 社内での実施状況を見ますと決して効果が出るような状況ではないように思います。
午前中にホッチキスを題材に「機能」の捉え方を実習しましたが、十分理解が得られたとも言えません。さらに、午後は自分たちの製品をもとにDRBFMの実習をするのですが、議論の場に図面も部品も出てこない。推進者に指摘するとみんな頭にはいっており、必要ないとのことです。現物がない状態でまともな議論ができるとは思えません。挙げられた「故障モード」を見ても、午前中の「機能」の実習が全く生きてない事例も見受けられる。これまでの社内での実施例をちらっと見る機会があったのですが、とてもまともな「故障モード」が導き出せているとは思えないものでした。
 講習を受ける意欲の問題もあるのでしょうが、現状のままでは本来のDRBFMの目指すところとは程遠く、世間一般の現状も変わりない状況にあるように思います。
 現状を知る機会がなく、自分の手法を伝授する良い機会と捉えたものの、結果的には自分の力不足を実感させられ、現実を突きつけられる結果に終わりました。
 DRBFMが持つ本来の有効性を否定するつもりはありませんが、これが世間一般の現状であれば、形だけのDRBFMはやめた方が良いように思います。その方が無駄な時間を費やす事もなく、日本の生産性を少しでも向上させる事に貢献できます。現状で効果が出ていると考えるのは、品質意識の向上で不具合の減少効果が出ているのであって、DRBFMそのものの効果を明らかにし、その効果の確認がなされてないためと考えます。
DRBFMの効果を明確にする事は結構難しく、不具合が出ないだけで効果ありと安心する訳にはいきません。実施したものとそうでないものを直接比較できないためです。同類の製品を市場に投入後の不具合発生状況を継続的に比較し、傾向的に不具合の減少を確認出来れば効果ありと言えるのでしょう。
 作業には常にチェックが必要で、実施する目的に対して目的が果たせているか否かを振り返り、必要に応じて改善を繰り返すことが求められています。